~廉価なカメラとPCでここまでできる~

第2回:中小企業向けセンサーレスIoT&AI

(公財)横浜企業経営支援財団 IT・IoT技術アドバイザー/ものづくりコーディネーター
山崎 隆

2020/10/28

1.はじめに

先日、IDECでスマートファクトリー化に向けたセミナーがあり、私も登壇させていただきましたが、同じ講演者であった企業の方からとても有効で新しいIoT&AIの事例をデモを交え紹介してもらいました。今回のコラムではその内容に触れさせていただきます。

2.製造現場の見える化データ

製造現場のデータは大きく分けると設備からのデータと、作業員の人からのデータになります。
現在、設備稼働率の入手はPLCやシーケンサからのデータによりよく行われていますが、人の稼働率に対する精緻な見える化は中々進まない状況が散見されています。経営者の方々は設備稼働率より人の稼働率の見える化を求められることが多いのが実情です。やはり初心者と熟練者の差は大きく、なんとか全体の底上げをしたいという声が聞かれます。
マスカスタマイゼーション、多品種少量生産や単品生産が進む中、実際の設備稼働率はあまり問題にならず、むしろ小ロットを頻繁に流すための段取り替えの手間が生産性を左右するという実例を多く散見するわけです。

3.とかく陥りやすいIoTソリューション

私はよく技術アドバイスでIoTの相談を受けた場合、以下のようなことをお勧めしてきました。設備のPLCやシーケンサのシグナルや、古い設備にはセンサーを付けて設備の稼働率や状態の見える化を図り、かつ、作業者の稼働状態をできるだけ現場に負荷がかからないようにしながらモニターすることです。ここで実は問題となるのが、各設備のPLCやシーケンサのフォーマットが各々微妙に異なり扱いが難しい、古い設備や積層信号灯にセンサーを付けてマイコンで処理し、集中監視することにも意外と手間がかかる、無線化を前提にしたとしても結局高所を含め工場内のいたるところにケーブルを這わせなくてはならないということです。また新しい設備に関しても、産業用ロボット、板金加工機、旋盤やマシニングセンターなど大手各社から様々なプラットフォームを提供されていますが、複数の設備を導入している中小企業ではそのような大がかりなプラットフォームを複数導入することは現実的ではありません。
現場の作業員の方も、製造作業を最大集中してやられているので、進捗を管理されるためだけの間接業務を嫌われるケースがよく見られ、結果、いまだに日報の手書きといった手間のかかる作業が減らせないジレンマに陥りやすいと考えています。

4. カメラとAI画像認識で一括把握

このような課題を一挙に解決するソリューションとして、廉価な監視用カメラを構内に配置し、AI搭載のPCにて画像認識の上データ化しクラウドに上げることにより、設備や人の稼働状況を一括把握するご提案があり、現在多くの引き合いがあるそうです。
カメラの映像ですので、設備の差異は問題とならず、古い設備もセンサーを付けることなく稼働率の見える化が図れます。作業員の動きも捉えることが出来ますので、最終的には設備と作業員の効率を最大限高める統合的な一元管理が図れることになります。従来、設備は設備、ヒトはヒト、と別々に管理することが一般的で、設備・ヒトの稼働率を統合的に分析・予測出来ているのは某大手自動車メーカーぐらいだと考えておりました。 それが中小企業においても安価な投資で実現できる時代になってきたのだと感じ入っています。
また、管理卓のディスプレーから文字やグラフを読み取ったり、設備の定常状態からの変化・予兆をAIで察知しアラームを上げるなど、その応用も広がりを見せています。

5. 将来に向けて

一方、ある大手企業では、顔認識だけではなく、ヒトが後ろを向いていても変装していてもその動きから本人を認識する技術がすでに開発されているとのことです。あまりに監視社会になってしまうことは望ましくないかもしれませんが、こうした技術により、個々の人の動きを精緻に捉えることができ、よりきめの細かい統合管理も可能になってくるものと考えています。

以上、AI画像認識を利用した工場の見える化について触れてみました。
廉価なカメラとPCによるセンサーレスIoT&AIも一度ご検討してみてはいかがでしょうか?

ContactIoT導入活用に関するご相談、
全般的なお問い合わせはこちらから。