小型化してきたLiDARと、その次世代技術

第4回:LiDAR

(公財)横浜企業経営支援財団 ものづくり・医工連携コーディネーター
山本 亮一

2020/11/19

1.はじめに

前回VR/AR/MRのお話をしましたが、その関連で今ホットな話題が、スマホ(iPhone 12 Pro) にも搭載された「LiDAR」(ライダー)です[1]。この単語は、自動車の自動運転の関係で耳にする事が多かったと思いますが、ついにスマホにまでも搭載され、私たちでも手に取って使える時代に、いよいよ突入してきました。

2.LiDARとは?

LiDARとは、Light Detection and Ranging (光検出と測距)の略で、レーザー光を対象物に照射し、その反射してくる光を計測することで対象物までの距離や速度などの三次元的な情報を測定する技術です。電波を使う「レーダー」に比べて、光を使う事で、より高精度に得る事ができます。
現在、いろいろな種類のLiDARが市場に出回っています。照射するレーザーの方式で分けると、レーザーをスキャンするものや、フラッシュで面的に照射する方式などがあります。スキャンの方式では、機械的に行うものや、可動部を持たない(ノンメカ式)ものがあります。その反射光で対象物までの距離を測る方式として、反射して帰って来るまでの時間を測るToF (Time of Flight)式や、光のドップラー効果も含めて計測できるFMCW (Frequency Modulated Continuous Wave) 式などが有ります。
例えば、初期の自動運転車両に搭載されていてよく目にする円筒形のデバイス[2]は、機械的にレーザー光をスキャンし、ToFで距離測定を行っているものです。

3.大学やベンチャーの先端的研究開発

今現在世の中ではフラッシュ式のLiDARが数多く上市されています。次世代技術としては、ノンメカ・FMCWで、安価、小型、高性能な、指先にも乗るような小さなチップに集積されたLiDARデバイス[3,4]の研究開発が、精力的に進められています。日本では、東京工業大学、京都大学、横浜国立大学などの大学による研究が目に付きます。海外ではAeva社やQuanergy社などの、ベンチャー企業の動向が、派手に報道されています。近い将来、自動運転が本格化して、このデバイスが使われるようになると、量産効果でコストダウンが進むでしょう。上記のベンチャーなどは、100ドル程度/ヶが実現可能と発表している程です。その時代には、iPhone 12 Proに搭載されたものよりも、ずうっと高性能なLiDARが身近に使える世界になるのです。

4.IoTデバイスとしてのLiDAR~中小企業の参入機会

そんな時代には、高性能LiDARが、身近なIoTデバイスの一つとなります。産業応用として、ちょっと考えただけでも、店舗内の顧客の行動分析や工場内での作業員の行動分析などが思いつきます。VR/AR/MR分野でも、カメラと組み合わされた応用が沢山生まれると思います。今現在でも、iPhone 12 ProのLiDARに向けたAR作成アプリ(例えば、Effectron[5]など)が、いろいろ出てきています。私たち中小企業にも、様々な事業機会が訪れるものと思います。

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