工場のヒトの動きの見える化と生産性向上

第5回:屋内測位

(公財)横浜企業経営支援財団 ものづくり・医工連携コーディネーター
山本 亮一

2021/01/26

1.はじめに

前回は、「LiDAR」(ライダー)のお話をしました。このデバイスは、レーザーで3Dの位置測定を行うもので、その産業応用として、店舗内の顧客の行動分析や工場内での作業員の行動分析などが考えられると申し上げました。この様な、GPSが使えない屋内での位置測定を行う技術を総称して、「屋内測位」と呼ばれるジャンルが有ります。今回は、それについてご紹介致します。

2.屋内測位の方式

屋内測位技術は、近年、急速に整えられてきました。例えば、平成31年3月には、国土交通省から「屋内地図/屋内測位環境構築ガイドライン(案)」[1]が、公表されています。この中では、屋内測位技術を、ユーザー視点から、測位機器設置型、環境調査型、及びその他の3つに分類しています。
測位機器設置型とは、測位に用いる機器(BLEビーコン等)を、新規に設置するものです。導入コストはかかりますが、最適な設置設計ができます。資料1には、測位手法としては、BLE、Wi-Fi、音波、可視光などが上げられています。環境調査型とは、新たな専用の機器は設置せず、既設のWi-Fi、BLE、地磁気などを利用して測位するものです。専用機器の設置コストはかかりませんが、既設機器の撤去などの環境変化に対応して、メンテナンスが必要になります。現在市中には、それらの手法を用いシステム構築を受託するSIerが多く存在しています。

3.大学の研究開発

大学に於ける先端的な研究として、国内では、神奈川工科大田中博教授[2]、新潟大牧野秀夫現フェロー[3]やMinseok Kim准教授[4]などのグループが有ります。
田中教授のグループでは、「音」に着目した研究が行われています。スマートフォンで送受信出来る非可聴音を使った測位システムや、室内の様々な音源を用いた測位技術の研究などが行われています[2]。牧野フェローのグループは、「光」に着目しています。可視光や近赤外光を用いた測位技術と、それをロボットの屋内ナビゲーションに用いる研究が行われています[3]。Kim准教授のグループでは、「電波」、特に5GやWiGigなどのミリ波帯の電波に着目しています。より高精度な電波トモグラフィーイメージング法などの測位技術の研究が行われています[4]。ものづくり現場への応用という観点からも、いずれも大変興味深い研究だと思います。

4.おわりに

ものづくり現場の生産性向上の為に、屋内測位を使って従業員の動きの見える化を行いたい方は、システム構築そのものは民間のSIerで可能です。見える化したそのデータをどの様に活用して生産性を向上するか、に知恵を絞れば良い状況と思います。あるいは、既存の測位技術では、ある特定のものづくり現場で使うには課題が有る、とか、その課題のソリューションそのものを製品化したい、とお考えの方は、産学連携に取り組むのも良いかと思います。

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