第8回:IT化の勘所~現場での検証ポイント

(公財)横浜企業経営支援財団 IoT窓口相談員
後藤 昌治

2019/8/26

 A社では、スリム化された業務と帳票をベースにしてIT導入検討を実施しました。初めての取り組みであるため、すべての現場へ一斉に導入するのでなく、特定の現場(職場)で試験導入して、有効性を検証してから全社展開することにしました。

 IT化にあたり最初に検討したのは、利用端末と導入ソフトウェアです。利用端末については、対象の職場では工作機械の操作がほとんどで、作業中の移動が少ないことから、タブレット端末を使用することにしました。移動の多い職場ではスマートフォンの利用も選択肢のひとつです。

 使用するソフトウェアは導入効果に直結するため、慎重な検討が必要と考え、複数候補を対象に選定ポイントを定め、現場での検証を通して決めることにしました。

導入ソフトウェアの選定

 選定の第1ポイントは、記録の効率性です。タブレットでの作業記録やデータ入力は、手書きに比べ煩わしさが伴うことがあります。特にデジタル機器に不慣れな場合には、その傾向は強くなります。一方、ソフトウェアの機能により、記録誤りや入力漏れが検出できるというメリットがあり、これによりトータルで記録の効率性が高まります。

 次に考慮したいポイントは、データ連携の仕組みです。帳票の記録は、生産状況の把握や品質管理などの目的で活用したいため、他のソフトウェアから記録データを容易に利用できることが必要です。たとえば、帳票の記録データが、CSVなどの所定のファイル形式で自動的にサーバーに保存され、他のソフトウェアがそのデータを参照する仕組みなどが考えられます。

 3つ目のポイントは、変更の容易性です。生産現場では、作業や品質の改善に伴い帳票のアップデートが必要となることを想定します。この場合、紙の帳票では容易に対応できますが、ITシステムの場合には、ソフトウェアの設定または変更が発生します。これらの作業が社内で対応できればよいのですが、外部へ委託する場合には、適正な期間と費用に抑えられるかがポイントです。

現場での検証

 複数のソフトウェア候補を試験的に導入して、記録の効率性、データ連携の仕組み、変更の容易性の3つのポイントで検証を行いました。具体的には、検証用の帳票を作成して現場のメンバーが「記録入力」を実施、記録されたデータを取り出して管理者による「データ確認」、そしてIT担当者が「帳票変更」の方法を確認しました。最終的には、それぞれのメンバーの意見の集約と3つの選定ポイントを考慮して、導入するソフトウェアの選定に至りました。

 このように、自ら手を動かして検証したことで、帳票のデジタル化がイメージから現実のものとなり、その後のシステム導入のよい準備となりました。メーカーのデモや他社事例を参考にするだけでは、決して得られない体験だったと言えます。

 この後、すべての帳票のデジタル化を経て、現場のデータをリアルタイムに収集して活用する段階に入ります。次回は「IT化始動と収集データの活用」についてお伝えする予定です。

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