中小IT企業の新事業としての独自サービス展開

第5回:新事業としての独自製品・サービスを成功させるための開発プロセス

(公財)横浜企業経営支援財団 IoT窓口相談員
矢野 英治

2019/01/30

 一般的な大規模システム開発における開発プロセスと、新事業としての独自サービスを開発するプロセスには大きな違いがあります。また、長年下請けで事業を行ってきた中小IT企業にとっては、これまでのプロジェクトの進め方に対する姿勢とは異なる見識を持って新たな開発プロセスを確立することが重要です。

 長年にわたるシステム開発プロセスは、企画・設計・プログラミング・テスト・検収のプロセスを経てリリースされ、運用フェーズに入ります。システムの規模にもよりますが、一度開発されたシステムは数年間使われ続けることも多々ありました。そのため、調査や企画をしっかりと実施し、きちんとした計画を立て、その計画に従ってシステムを開発するという進め方が一般的に取られてしました。このような開発プロセスを踏むことによって、進捗管理を徹底し、品質を確保することが可能となっています。

 新事業としての独自サービスを展開するにあたっては、まずターゲットとする市場や顧客を正しく理解することが大切になります。この作業はマーケティングを主体に行っている企業においても難しいもので、ましてや、これまで開発主体の事業を行ってきた中小IT企業が、市場や顧客のニーズを開発前に正しく理解することは不可能に近いものです。

 このような状況においては、最終的な製品の設計を行って開発を進め、完成したITシステムやサービスを一度にリリースする進め方ではなく、一部のコアとなる機能を先行開発し、小さくリリースすることで、早く顧客からの評価やフィードバックを得て、製品やサービス開発の方向性を微調整していく手法が有効であると考えます。これを短いサイクルで繰り返し、市場や顧客の理解を深めながら機能を追加していくことで、ニーズにあった製品やサービスを無駄なく提供することが可能になります。たとえば、「リーンスタートアップ」のような考え方が参考になります。

 リーンスタートアップは新事業を立ち上げる際によく利用されるフレームワークですが、これを実現するためのソフトウェア開発技法の一つが「アジャイル開発」と呼ばれるものです。新事業としての独自サービスの開発においては、このアジャイル開発が適しているケースが多く見受けられます。

 一般的にアジャイル開発は従来のウォーターフォール型の開発に比べてプロジェクト管理が難しいと言われています。しかしながら、昨今のアジャイル開発を実現するためのツールは大きな進歩を遂げており、より安価により迅速に、さらには、高い生産性で開発を進めることが出来るようになってきました。

 例えば、従来のウォーターフォール型の開発では、早くても半年、長い場合には数年かけてシステムを開発しリリースします。製品のバージョンアップも1年に一回程度という製品も多いです。これと比較して昨今の著名なインターネットサービスにおいては小さな新機能のリリースを一日に数回行うことも可能になっています。また、二種類の同等の機能を同時にリリースし、どちらの機能がより高評価が得られるかをテストするA/Bテストも良く行われています。

 こういったより柔軟で高生産性な開発プロセスを実現するためには、ソース管理・仮想環境構築・自動化テスト・自動デプロイ・自動運用・モニタリングなどのツールの活用が不可欠です。また、各プログラミング言語を補完するフレームワークを利用することも高生産性につながります。

 これらのツールのシームレスな連携や開発チームビルディング、自社にあった開発プロセスの確立が、継続的インテグレーションやDevOpsといった開発しながら運用する、つまりこれらを併用して行うことが出来るようになります。さらに、この開発プロセスと新事業としての独自サービスの展開との整合性を取りながら、少しずつシステムやサービスを改善していくことで、独自ビジネスの成功につなげていくことが可能になります。

 次回は、最終回です。開発した新サービスをいかに展開していくかについて、「新事業としての独自製品・サービスを成功させるためのマーケティング」というテーマでお伝えします。

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