中小IT企業の新事業としての独自サービス展開

第6回:新事業としての独自製品・サービスを成功させるためのマーケティング

(公財)横浜企業経営支援財団 IoT窓口相談員
矢野 英治

2019/03/27

 独自サービスの開発が完了し、さてこれから独自製品やサービスを売り出そうと思っても、これまで下請けを中心に事業を行ってきた企業にとっては、この独自サービスをどのようにして販売促進し、売上に結び付けていくのかは手探りの状態のことが多いでしょう。

 今回は、開発した独自製品やサービスの提供にあたって、これまで行ってきた企業の事業特性や提供する独自製品やサービスの種類に応じて、考えられるマーケティング手法について考えてみたいと思います。

 マーケティングの基礎においては、よく4Pというフレームワークが使われます。Product(プロダクト:製品)、Price(プライス:価格)、Place(プレイス:流通)、Promotion(プロモーション:販売促進)の4つのPについてどのような取り組みを行うのかをそれぞれ考えていくものです。

 製品と価格については、製品を企画する段階において、ターゲットとなる市場や顧客を分析した上で製品開発をスタートさせていることがほとんどですので、この2つのPについては、製品の企画時における外部環境や内部環境が、開発を終了し販売活動を行っていく現在においても大きな変化がないかを確認する作業がメインになります。

 もちろん流通や販売促進についても開発が完了してから始めるのではなく、開発と並行して準備し、取り組みが始められていることは重要です。しかしながら、開発期間中の外部環境や内部環境の変化によって、製品やサービスの仕様が変わることはよくあることです。また、実際に動作する製品やサービスを存在しないと、パートナーや顧客も、その製品やサービスのイメージを持つことが難しいです。

 現実的には、開発の後半になって、実際に動作する製品やサービスを利用したマーケティング活動を本格化させることが多いのではないかと思います。

 まず流通ですが、自社において直接顧客に販売するのか、顧客との設定が多いパートナー企業を通じて販売するのかという大きな選択があります。もちろん、自社で販売しながらパートナーにも売ってもらうということも可能です。

 IT製品やサービスは、一般的なコンシューマー製品と異なり、機能が複雑でプレセールスが必要であったり、運用や保守サービスが必要になったりすることが多いです。どの作業をパートナーに行ってもらうのか、その際のライセンス料などの取り分をどうするのかなど、しっかりと協議し契約を締結することが求められます。

 プロモーションについては、パートナーに製品やサービスの特徴や利点を説明して売ってもらうことや、プレスリリースの配信や展示会への出展、ホームページなどでの製品説明といったこれまでの一般的なマーケティング手法に加え、インターネット上での販売促進も考えられます。

 製品やサービスを紹介するコンテンツにおいては、パートナーや同業者に紹介するコンテンツなのか、最終顧客に紹介するコンテンツなのかを明確に区別し、別々なコンテンツを作成することを強くお勧めします。展示会の出展なども同様で、パートナー開拓なのか、顧客獲得なのかによって出展する展示会は変わって来ます。単純にVRの製品だからVR展にとはなって競合の中に埋もれてしまっては元も子もありません。

 最近では、インターネット上のサービスのポータルサイトで、SaaS製品の一覧情報を取得したり、検索したり、比較出来たりするサイトが出ています。「マケスト」といったこのようなITサービス・ツールを比較できるポータル専門のサイトが存在する他にも、Amazonでは、「SaaS (ビジネス向けクラウドサービス) ストア」、ソフトバンクでも「ビズテラス ストア」というサイトを運営しています。

 これから新事業として独自製品やサービスの提供を行う企業は、すでに受注開発や独自製品やサービスを展開済の企業よりもプロモーションの経験や知識においても後発であることは否めません。しかしながら、先に述べたようなSaaS製品・サービスのポータルサイトや、「共同通信PRワイヤー」などのオンラインでのプレスリリースの配信、facebookやLINE広告のようなSNSの活用など、これまであまり使われてこなかった新しいマーケティングツールを利用することによって、この後発であるというハンデを克服することも可能であると考えています。

 また、現在のIT製品やサービスはAIやRPAなどと言ったテクノロジーのキーワードを売りにした紹介が多いですが、その製品やサービスが最終顧客にとって、どのようなシーンでそのような効果を発揮するのかを明確にうたったマーケティングコンテンツや製品のホームページなどを作成することによって、先行している他社とは違った、受け手に理解しやすい魅力を伝えることが出来るのはないかと思います。

 以上で当コラムも最終回になりました。最後までお付き合いくださりありがとうございました。当コラムが参考になり、貴社の独自製品やサービスの新事業が立ち上がり成長するお手伝いが出来れば幸いです。横浜企業経営支援財団では新事業への取り組みを支援するサービスを提供しておりますので、必要な際にはご連絡いただければと思います。

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