経営戦略実現のためのITシステム導入の成功に向けて

第1回:労働生産性向上のためのIT投資の必要性

(公財)横浜企業経営支援財団 IoT窓口相談員
矢野 英治

2019/05/28

 2018年に日本生産性本部が調査した国際比較において、日本の時間当たり労働生産性は47.5ドルで米国72.0ドルの3分の2程度の水準に相当し、順位はOECD加盟36カ国中20位でした。

https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/ 

 総務省の情報通信統計平成30年度版の「日米におけるICT投資の現状」において、日本のICT投資額に対する米国のICT投資額は、1994年は1.4倍でしたが、2016年には4.0倍と差が広がり、年間投資額の差が拡大していることがわかります。

 2010年価格を基準としたGDP(実質値)では、日本は1994年に433兆円であったのが2015年に526兆円とこの期間1.2倍の増加であるのに対し、米国は1994年に10.0兆ドルであったのが2015年に16.6兆ドルと1.7倍程度の増加となっています。

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n1300000.pdf 

 このように、ICT投資とGDPの間には正の相関関係が見受けられます。

 労働生産性という言葉ですが、「働き方改革」などをきっかけに、この言葉を聞くことも増えて来ました。

 ここでいう労働生産性とは、付加価値労働生産性のことで、企業ですと一人でどれだけ利益を生み出しているかということになり、単純な式で表すと以下の通りです

  • 付加価値額=営業利益+人件費+原価償却費
  • 労働生産性=付加価値額÷従業員数

 この労働生産性が上がらなければ、どんなに一生懸命に長時間労働をしても、なかなか利益が上がらないということになり、そのまま休みが取れない、給料が上がらないにつながります。

 国際競争力の低下だけではなく、国内人口の減少などに対しても対策が急務であり、ITやロボットなどの活用が今後さらに重要度を増していくことは間違いないでしょう。

 このような状況の中においても、特に中小企業においてはITの利活用が進んでいない状況が見受けられます。その理由には、経営者が積極的でないとか、誰に相談して良いかわからない、過去に導入したITシステムの効果が見受けられないなど様々です。

 このコラムでは、広義のIT導入をIT戦略策定、企画、導入、活用というフェーズに分け、それぞれのフェーズで利用可能なツールやフレームワークを紹介しながら、IT利活用の成功に向けた説明を、ITベンダとユーザ企業の両方の視点から行いたいと思います。

次回以降、

「経営戦略とIT戦略の関係とIT戦略の策定」
「ITシステムの企画・見積・調達」
「ITシステム導入のためのプロジェクトマネジメント」
「ITシステムの継続的活用(モニタリングと改善)」
「アジャイル開発、アジャイル運用」

という内容で進めて行きたいと考えています。

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