経営戦略実現のためのITシステム導入の成功に向けて

第2回:経営戦略とIT戦略の関係とIT戦略の策定

(公財)横浜企業経営支援財団 IoT窓口相談員
矢野 英治

2019/07/29

 経営戦略という言葉は、おそらく多くの方が聞いたことはあると思いますが、一方で、IT戦略という言葉については、聞いたことがないという方も多いかと思います。IT戦略とは、経営戦略を実現するために、ITをどのように活用するのかを戦略として考えるものです。

 IT戦略についての理解を深めるために、まず初めにITの導入契機の違いと、ITの導入目的の違いという二つの軸について考えてみましょう。

 まず、ITを導入する契機として、現場主導型と戦略主導型の二つの導入契機の違いについて見ていきましょう。

 一つ目は、ハウスメーカーが建築予定の家を、VRを使って見込み顧客に体感してもらうことで受注率を高めるといった、特定の課題を解決するためにITを導入するケースがあります。このような課題解決は現場主導で行われることが多いです。

 もう一つは、これまで店頭販売のみだった製品の売り上げが中長期で落ち込む予想に対し、新たにインターネット上でも販売し、全体の売り上げの3分の1をネットでの売り上げにしなければ生き残れないなど、経営全体の課題の中から、その課題を解決するためにITを導入するようなケースです。

 もう一つの切り口としては、ITの導入を売上増や事業拡大を目的として行うのか、コスト削減のために行うかの分け方もあります。

 先に述べた二つの導入契機については、売上や利益を直接増やすための施策として、攻めのIT投資であると言えます。一方、最近話題となっているRPAの導入などを通じて、現在の業務を効率化することでコストを削減するという従来型のIT投資もあります。

 経済産業省は、中小企業におけるIT経営を推進するために、2007年から「IT経営力大賞」として実施していましたが、2015年から2017年には、「攻めのIT経営力中小企業百選」として、主たる審査基準を「ITが売上増や事業拡大にどの程度寄与しているか」に変更し、より積極的な攻めのIT利活用を推進しています。

 従来の国内におけるITの利活用は、コスト削減が主たる目的で行われていました。しかしながら、前回お話ししたようにグローバルな視点で見ると、ITをより積極的に活用し、売上増や事業拡大に活かしている例が多く、これからのIT投資は、より積極的な攻めの姿勢が求められていることが理由です。

 コスト削減を目的として短期的なROIを判断の基準で行うIT戦略だけではなく、中長期での経営戦略と連動した攻めのIT戦略を策定することが非常に重要になっています。

 また、ITシステムを導入する企業だけではなく、ITシステムを提供する側のベンダも、このような意識をもって提案してもらうことで、より効果的なITの利活用が実現すると考えています。

 次回は、「ITシステムの企画・見積・調達」についてお話していきたいと思います。

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