経営戦略実現のためのITシステム導入の成功に向けて

第5回:ITシステムの継続的活用(モニタリングと改善)

(公財)横浜企業経営支援財団 IoT窓口相談員
矢野 英治

2020/01/30

 ITシステムの利活用においては、ITシステム開発やリリースといったシステム導入フェーズに焦点があてられがちです。しかしながら、モニタリングや改善を通じたITシステムの継続的な活用は、導入と同じように非常に重要です。

 ITシステムを導入したものの、その効果が十分に挙げられていないことは多々ありますし、導入時には効果的だったITシステムが、時間の経過に伴い使いにくくなり、効果が低下していくケースも多々あります。

 このような状況を防ぐためには、ITシステムの運用状況のモニタリングと改善が不可欠で、このモニタリングと改善はITシステムの中だけにとどまらず、業務と関連付けて行われる必要があります。

 もう一つ大変重要なことは、ITシステムの企画で検討した経営戦略や事業戦略とIT戦略を理解した上で、これらの戦略を実現するための評価指標を設定することです。

 PDCAという言葉を聞かれたことがある方もいらっしゃると思います。計画(Plan)したものを実行(Do)し、結果を評価(Check)して次の行動(Action)につなげていくこと。さらにこのサイクルを繰り返し行っていくことで、継続的な改善につなげていくものです。

 まず初めに重要なこととして、ITシステムの効果をどのように評価するのかの基準を作成しておく必要があります。これらの指標の作成はITシステムの運用を開始する時点では完了している必要があります。

 オンラインショップを例としてあげてみたいと思います。オンラインショップでは、以下のような指標が考えられます。

>>> 新規顧客を増やし売り上げを増加させるために、

  • 月間のホームページへの訪問者数は何人なのか?
  • そのうち何%が資料を請求してくれるのか?
  • そのうちの何%が商品を購入してくれるのか?
  • 1回あたりの平均購入金額はいくらか?

>>> 既存顧客にリピート購入してもらうために、

  • 既存客にはどのくらいの頻度でDMを送るのか?
  • DMの開封率は何%なのか?
  • 顧客のリピート率はどのくらいなのか?
  • 一人当たりの平均年間購入回数は?
  • 一人当たりの平均年間購入金額は?

 これらの指標は、システムのダウン時間や応答時間などと言ったITシステムの直接的な指標ではなく、ビジネスへの寄与度が図れる指標です。もちろんダウン時間や応答時間は上記の指標にも大きく影響するので、それらの指標も必要ですが、もっとも重要な指標は、ビジネスへの貢献度であることを忘れてはなりません。

 これらの指標を定期的に確認するとともに、予測値と実績値を比較し、その差分について原因を検討し、改善につなげて行くことで、ITシステムは継続的にビジネスに貢献することができます。

 PDCAを回していくうえで忘れてしまいがちで、かつ非常に重要なことは、指標に対する予測値を必ず設定しておくことです。初めのうちは精度が悪かったとしても、かならず予測値を設定し、実績との差分についてしっかりと考えることで、予測の精度が上がっていき、より適切なアクションが導き出だされることにつながります。

 もう一点、上記の指標には自分たちが直接コントロールできるものと、顧客の行動による結果で自分たちが直接コントロールできないものがあります。DMの発送頻度だけは自分たち次第ですが、それ以外は直接のコントロールが出来ません。

 このように、直接コントロール出来るものと、コントロールできないものは区別して結果を評価し、その関連性まで考察することで、より適切なアクションが導き出されると考えます。

 次回は最終回です。「アジャイル開発、アジャイル運用」について紹介する予定でしたが、第4回の中で紹介させていただいたことと、昨今の情報セキュリティに対する対策の必要性の高まりを受け、「情報セキュリティマネジメント」というテーマでお話させていただきたいと思います。

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